* “果汁先生”〜共同生活の常識?!〜 *
(メールマガジンでお届けに上がる商品のほんの一例です。)
こないだ、夢のお告げで久々に友達が家に遊びに来てくれた。
(ことについては『全部実話だ!PART・I 』にあります。)

彼女はここに来るのは初めてだったので、ワタシは自転車で彼女を最寄りの駅まで迎えに行った。

その時彼女は結構大きな鞄を持っていたので、自転車のカゴに入れる様すすめたのだが、彼女は遠慮してる風も無くそれを断ったので、(革の鞄だから傷が心配なのかな)と思ってワタシもそれ以上無理強いはしなかった。

2人で歩いて家まで来ると、彼女は上がるなりトイレに行った。

彼女がトイレに行って間もなく、ワタシは

「しまった!紙がトイレの中に無いって言うの忘れちゃった!」

事に気が付いた。

でもこういう時、大抵のお客は「ねぇ、紙が無いよ〜」とか言いつつトイレから出てくるモノなのだが、彼女はなに食わぬ顔でトイレを済ませて戻って来た。

「あ、紙が無かったでしょ?」

と言うと友達は、「あ、ん。持ち込みでしょ?」と言った。

「あ、解った?サスガ〜」

「あ〜解った解った。ハハハ、ほら、カナダで共同で住んでたからね〜。何でも持ち込みだったから。中に置いとくとすぅぐ無くなっちゃうんだよね〜。」と彼女。

「そうそう、何でもすぅぐ無くなっちゃうよねぇ(^_^;)」

とワタシ。

旅先や長期滞在などではトイレやシャワーやキッチンなどなど・・・は共同で使うコトが多い。

で、その際、自分のモノを置きっぱなしにしておくとみんなに使われてしまってあっと言う間に無くなってしまうのだ。

旅の終わりに、使い残した消耗品をトイレやシャワールームに残して行く人もいるから、そこに置いてあるモノは自分にそういうつもりがあってもなくても自動的に「どうぞご自由にお使い下さい」という風に解釈されてしまうモノらしい。

何人かで家を借りて共同で住む場合なんかでも、そういう慣習からか、そういったモノがトイレやシャワールームに置いてあったなら「みんなで使ってね」という風な事になってしまうらしくて自分のモノがすぐに少なくなってしまう。

モチロン、太っ腹な人はそれでいいかもしれないけれど、旅行中は誰もが小銭に細かくなっているモノなのデス。

まぁ、ごくごく親しい者同志で共同生活をしている場合は、こういった消耗品を共同で買って共同で使ってるって人もいるが、まぁ、大抵は各自のモノは各自が管理している、というのが普通だ。

・・・今のワタシはそういう意味でトイレットペーパーをトイレに入れて無いってワケじゃ無くて、只、はめ込み式のトイレフロ一緒のバスルームだからトイレットペーパーを入れっぱなしにしておくとすぐに濡れてしまう為、トイレの外に置いているってだけなのだが、そうした生活が染みついていた(?!)彼女は、トイレの前の箱の上に置いてあるトイレットペーパーをごく自然に手にしてからトイレに入ったらしい。

(ん〜ん、躰にしみついた習慣というのは恐ろしいものデスね。)

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そうそう、無くなってしまうと言えば、食料も無くなってしまう。

まぁ、食料の前にドミ(ドミトリー。安宿の大部屋。快適さはピンキリだけど部屋に蚕棚の様に2段ベッドがぎっしり並べて置いてあったりする。大抵、トリプル(3人部屋)以上をドミと言う事が多い)では何でも無くなってしまうけれど。

日本の人が良く盗まれてしまうのはお金を始めウォークマンやラジオ、カメラなど。

そういうモノは、つい自分のベッドの上に置きっぱなしにしてしまって、部屋についているトイレに行って帰って来たらもう無かった、なんて事も少なく無い。

盗る方が悪いのはモチロンだけれども、盗る側からしてみたら、ベッドの上にぽんと置いてあるそれらのモノは、シャワールームに置いてあるシャンプーと同じで「どうぞご自由に」って感じがするんだろう。

ええと、何だっけ。そうそう、食料。

食料もよく無くなる。特に冷蔵庫に入れたモノ。

だからみんな自分の食料には名前を書いて置く。日付も書いて置くと尚イイ。管理人がたまに冷蔵庫の掃除をするのだが、その際捨てられないからだ。

香港のYH(ユースホステル)でワタシも未開封のオレンジジュースを飲まれてしまった事がある。

余談だけれども香港YHは港島のMt.Davis(香港島、Mt.Davis YHS)という山の上にあるから、夜景がすごく綺麗(夜景で有名なビクトリアピークの西側の山になると思う。)なのに加えて当時は啓徳(カイタック空港)だったから、夜景と一緒にひっきりなしに離発着する飛行機を見るのもなかなかオツなものだった。

近くの山肌にはべったりと赤ペンキで目印がしてあったりして、それを見るだけでも世界一離発着がむつかしい空港(だった)ことが伺われる。

さて、そのジュースはまだ日本には無かったミニペットボトルで、例によってきちんと名前を書いて冷蔵庫に置いたのだが・・・宿に戻ってキッチンの冷蔵庫からジュースを出して蓋を空けると・・・ぷしッという音とともにスンナリとふたが開いてしまった。

一瞬、(アレ?!オレンジジュースが発酵???)
って思ったんだけれども、そもそもワタシはまだ蓋を開けた覚えがない。・・・と思いつつもジュースを口に入れると、オレンジジュースの筈なのになんだか舌がぴりぴりする。それになんかちょっと苦いし、オレンジの味も薄まっているみたいだ。

ワタシは何が何だか解らなくて、只「???」という具合に首を傾げるばかり。

(ワタシの留守中に、一体何が・・・)

(誰かが空けたのかなぁ・・・)

(でも、一体何で???量も減ってないしなぁ・・・)

(やっぱり?!オレンジジュースが発酵???腐っちゃったの???)

(いやいやちょっとヘンな味だけど腐っては無いよなぁ・・・第一冷蔵庫入れてたんだぞ!・・・イヤ、でも・・・?!)

(!それとも、『果汁先生』っていうこのジュース、こういう飲み物なのかしら?果汁じゃ無くて炭酸飲料とか?!)

ん〜・・・などと思いつつビンの漢字の羅列を読んでみたり。

しばらく思い悩んだ所へ、ちょっと仲良くなった日本人のお姉さんが通りかかったので呼び止める。彼女は広東語にも明るい筈だ。ラッキー!

三人よれば文殊の知恵・・・って2人だけど。

彼女曰くは『果汁先生』は、やっぱり炭酸飲料じゃなくってオレンジジュースだっていうコトだった。それで、結局誰かがワタシのオレンジジュースを空けて半分飲んじゃって、しょうがないから自分が飲んでたか何かのサイダーを足して置いたんだろう・・・ってコトになった。

はぁ。

・・・それにしても・・・シャンプー使われちゃったりバターが無くなったりカメラ盗られちゃったりっていうのはあるだろうけど・・・飲んじゃったジュースを別のモノで足しておくって言うのもなぁ・・・まぁ、毒が入って無くって良かったけど。

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そうそう、我が家でトイレットペーパーを自ら持ち込んで用を足した友達は、その日すげー具合悪くて何度もトイレに行ったり薬飲んだり携帯カイロ当てたりして気の毒だったが、まぁ元気に下らない話しをして、夜11頃帰るコトになった。

その時もワタシは自転車を押して駅まで送ったんだけど、具合が悪かったコトもあるんだし、来る時と同様彼女に

「鞄、カゴに入れなよ・・・革鞄に傷が付くのがイヤじゃ無かったら・・・」

と言った。すると友達は

「イヤ、そうじゃ無くってさぁ、ここに入れたら何か、持ってかれそうじゃない?!」

と言いつつ彼女は

「こうやってさぁ・・・」

と自転車のカゴに入れたつもりの鞄のとってを持って行く手つきをした。

・・・ううん、流石。

彼女は、N.Y.でもカナダでも女独りで旅行してて、旅の途中、怖い思いも何度かしてるんだけど、それでも無傷で帰国しただけのコトはあるナ、とワタシは改めて唸った。

きっと彼女だったら蓋の開いたオレンジジュースの味見なんかしなかっただろう。