* 母 の 手 紙 *
(メールマガジンでお届けに上がる商品のほんの一例です。)
旅に出ている時、母から受け取る手紙は少なからず「?」というモノが多かった。

まず、「ちはる。は今どこにいるのですか?」といった問いかけ。
じゃあアナタは一体、何処の誰宛に手紙を出したというの???ツッコミたくなるのだが、本人は至って真面目に訊いているらしい。

あと多かったのが「(読めないので)手紙を英語で書いて来ないで下さい。」というもの。日本にいる日本人の母に対してワタシがわざわざ英語で手紙を書くなど考えにくいし、第一ワタシは外国語に関しては全くの文盲だからそんなコトはあり得ないハズなのだが、母はしつこくそう書いてくる。

しばらくして、もしかしてそれは宛名である現地の住所のコトを言っているのでは、と閃いた。

それで住所をかなで書いて送ってやろうと思ったのだが、そんなコトしたらエアメイルの宛名もカタカナで書いてきそーなイキオイだったので、「英語の所は申し訳ないけれど妹子(妹の仮名)に読んでもらって下さい」と書いて送った。

それからお馴染みなのが、いつもワタシが居る所と全くカンケー無い国の紛争とかテロとかの事件を取り上げては「ちはる。の所は大丈夫ですか?」というもの。

その書き方は、こういったことがどこどこで起きていますが「ちはる。の所は大丈夫ですか?」といった書き方というよりはむしろ、今その事件の起きているすぐそばに、まぁだいたい三間先くらいの所にワタシが居て、大丈夫か?と言ったニュアンスなのだ。

でもまさかねぇ・・・いっくら母ぁちゃんとはいえ・・・やっぱりちゃんと別の国のコトだって解ってて心配してくれてるんだよねぇ・・・だいたいワタシだって最低限、今居る場所と次に向かう土地の名前くらいは手紙で知らせているワケだし・・・
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帰国後ワタシはナース、予備校を経て大学に入学した。それで神奈川に住んでいたのだが、やっぱり田舎に比べるとひじょーに物価が高い。

ある日母と電話してる時、ふとそのコトを話すと母は

「ええ?高いの?なんで???そっちの方は安いんじゃないの?よくTVで安売りの店!とかやってるじゃない?なんで高いのよ???」

と言う。調べてみると、どうやら彼女は築地のお店とか上野とか八王子とかのお店のコトを言っているらしい。なるほど、オーストラリアにいるのにザンビアの事件を心配するワケだ。

・・・きっと宛名もカタカナで書いてきたに違いない。