* バイクとメディテイション・リング *
(メールマガジンでお届けに上がる商品のほんの一例です。)
今、ワタシは『ピープル』という“自転車バイク”が猛烈に欲しい。

それは見かけは自転車らしく、ペダルをこいでいるウチにエンジンがかってバイクになるというしくみで、ギアを抜けば(しごく重たいらしいが)自転車として乗れる乗り物らしい。実はワタシもホンモノを見たコトが無い。

ちなみに動力が繋がっている状態で15km/時しか出ない。本田技研の、もう生産されていないバイクだ。

オヤジが高校生の頃のバイクはみんなこうだったらしく、ペダルが着いていて、ペダルを漕いでいるとそれが押し掛けの様な感じになってエンジンがかかったと言う。

前からワタシはそのオヤジの言う“自転車バイク”(という言い方はワタシが勝手にそう言っているだけです。)が欲しかったのだが、手に入らず、普通のオフロードのバイクを持っている。

1台目のオフロードバイクはまだ4ストで良かったんだけれども、それを売って買った、今持っているバイクは2ストでスピードもバカみたく出るし、車体が大きくて足なんか全然つかないし、まぁともかく身に余るものを買ってしまったって感じで全然乗れてないワケです(^_^;)。

オフロードのバイクだから車体もゴツけりゃメットもゴツいしブーツもゴツい。婦女子が街乗りするのにはちょっと目立ちすぎる感じ。皆の視線がキビシイ。

乗る時は「のるぞ〜」と身構えなければ乗れマセン。若い頃の様に命知らずに林道を突っ走りたい、という欲求も無くなりました。

それで最近では、何気にふらっと乗れるバイク(YAMAHA発動機の「セロー」とか)が欲しいな〜と思っていた所、それもかなわずさらに月日が経ってしまい、近頃では「“自転車バイク”ならガス欠の心配も無くて一石二鳥!」「やっぱ“自転車バイク”がいいにゃ〜」という気持ちがリバイバルしていたワケです。

その“自転車バイク”に乗って、「ガソリンです。」「ちはるです。」なぞと言いながら、呑気にのんびりと一人ハイブリットカーゴッコしたい。

というのは冗談ですが、まぁ、ともかくそういうのにだらだらとそしてちょいちょいと乗りたいと思っていたワケです。

そんな折、友人の車屋さんから「その、オヤジさんの頃のは無理だけど、ホンダの『ピープル』ならまだ手に入るかも」とそそのかされ、今探しているところです。

どなたか譲って下さる方がおられましたらご一報下さいm(_ _)m。


・・・そもそも、なんでそんな身に余るバイクを買ってしまったかというと、実はワタシはいつかバイクで世界を旅してやろうと思っていた為、「い〜バイクを買っとこう!」と思ったからだ。

でも実際は予想外の時、予想外の事態(についてはまた機会がありましたらお話したいと思います。)でユーラシアをさまようコトになってしまい、(その為所持金が10万ぽっちだったのです。)当のバイクは日本に置いた切り。

そんなワケで、未だワタシは「バイクで旅行」の夢は実現せずだが、旅先で会ったある人はそれを実践している人だった。

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彼とは、確かコバラムという所で出会った。

南印度にあるビーチだ。

例の妹と旅行した怒濤の印度旅行で出会った日本人の旅行者だ。(怒濤の印度旅行についてはこちらです。)

彼はカブ(ホンダの「スーパーカブ」。50ccでよく信用金庫のお兄さんとかが外回りで乗っている、ギアがロータリーのヤツ)に乗って印度を旅していた。

カブの荷台にはジェラルミンのボックスが両側についていて、かっちょ良かった。

彼は「海外旅行」は2度目だと言っていた。

彼の様に、期間や目的地を限定せず、カブで思うままに走り、疲れたら休んで食べて、また走って・・・というスタイルの人に「海外旅行」という言い方はとても不釣り合いな感じなんだけれども、彼は自分のすげー旅のコトを、決まって「海外旅行」と言っていた。

「彼女は日本に残して来たの?」と訊いた所、

「恋人がおったら「海外旅行」なんかせぇへんよ!絶対せぇへん」

と言っていた。

そんな彼の1度目の「海外旅行」も印度で、でもバイクじゃなかった。

その最初の「海外旅行」の途中、彼は麻薬にハマってしまったのだという。

毎日ヘロインを注射してものも食べず、誰とも話さず、体も動かさず(体を動かすと吐いてしまうのだそうだ。)ずっと宿屋でうずくまってクスリがもたらす春の日溜まりの様な状態をむさぼる日々が続いた。

ある日、流石にこれじゃいかんと思ったのか、彼はバイク(やっぱりホンダの「スーパーカブ」)を手に入れて、それで走り出した。

走って走って走って走って、すごく走ってずーっと走って、彼はすごく久しぶりにおなかがすいた。

それでチャイニーズ(フード)をがつがつ食べたら、すっかり麻薬の中毒症状が無くなってしまったのだという。

それ以来、彼は

「俺はバイクと一緒じゃないとダメなんや」

というコトで、今回の2度目の「海外旅行」にもわざわざ日本からカブ持参で来たという。

ジェラルミンのケースは、前回の盗難の教訓を生かして特注で付けて来た、彼のご自慢の一品である。

彼は、ワタシ達姉妹に色々な話しを聞かせてくれた。

サリー屋のお兄さんと仲良くなって、一緒に店番をしたことや前回の印度旅行の話し、ある民族の酋長と「ガンヂャ」を飲み交わしたコトですごく仲良くなった話し・・・

「ガンヂャ」というのは日本で言う大麻のコトで、「チラム」という特殊なパイプで吸う。

印度でももちろん大麻は法律で禁じられているが、ヒンドゥー教では「神に近づく行為」としてこの「ガンヂャ」が重んじられている他、彼が旅先で出会った様な少数民族の部族でも重要な役割があるらしい。

まぁそういったワケで印度政府としては、大麻は黙認という感じみたいだ。(だからこそ、旅行者がすぐ手に入る大麻をみだりに吸って、その為最終的にはヘロインに手を出して重度の麻薬中毒になってしまうコトも少なくないのである。)

彼は、その酋長にもらったチラムを見せてくれた。

そして、その部族のガンヂャの吸い方や、吸う時の魂の澄ませ方、吸う時は環境や準備などのセッティングづくりが一番重要だというコトなども教えてくれた。

その時は、ちょうど夜だったので、「メデテイション・リング」というのも教えてくれた。

それは、「CARMS」という印度のタバコの箱を使うもので手順は次の通りだった。

セッティングは夜。
まず、マッチを井形に4本組み上げる。
その上に「CARMS」の箱をなるべく円になるように丸く折って乗せる。
そしてその箱に火を点ける。

すると「CARMS」の青い箱の染料が燃えて、炎は丸く青く輝いた。

南印度の闇の中、その青い輪っかはゆらゆらとしみじみと蒼い残像を残しながら落ちて行った。

そして最後に、青い輪っかが下まで落ちると井形に組み上げたマッチに順番に火が点き、しゅっ、しゅっ、とフラッシュの様に瞬いて「メディテイション・リング」の最後を締めくくるのだそうだ。

その時は最後のフラッシュは失敗してしまったが、その変わり、丸く青い炎がしずかに消え入るその美しさ、しずかさは例えようも無い程だった。

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彼とは2、3日位同じビーチにいたと思う。(と言ってもワタシは殆ど海で泳いだ記憶が無いが。)

別に1日中行動を共にしていたワケではないけれど、妹と3人して注文してから食事が来るまで半日くらいかかる食べ物屋さんで話しをしたり、夜遅くまで波の高い岩場で何か語らったりした。

それで彼が、ワタシがだいたい夜中の2時を過ぎる辺りから酒もヤクもやってないのにやたらと陽気になるコトに気付き、

「それは“ナチュラル・ハイ”だよ。それは全ジャンキーの憧れ(の状態)なんや」

と教えてくれた。

彼はその後、只でさえ大変な印パキ国境を機関銃に睨まれながらカブで乗り越えた、というハガキをくれた。文句無しの「旅の強者」だ。

「恋人がおったら「海外旅行」なんか絶対せぇへんよ!」

ということば通り?今では彼はカブの旅からはすっかり引退(?)して奥さんと2人、地元で仲良く暮らしていると風の噂で聞いた。

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ワタシはいつか“自転車バイク”を手に入れる。

そしてワタシの「青い輪っか」を見つける旅に出たいのだ。時速15kmでちんたらと。