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ふぁいるでーた

風をあつめて。〜旅行記編〜その04・横浜のにじ


通しNo .01004
〜なはなし
〜のはなし
旅・せかい
せかい
旅全般・旅行記「ダラ」
〜のころ
すなふきん(前半)
とき '92 7月-'92 10月
メルマガ配送日
 2002/08/05号


風をあつめて。〜旅行記編〜その04・横浜のにじ

*このお話しは続き物(連載)です*
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<1991年7月30日 横浜港>

いよいよ自分も乗船だ、とぼろっちい建物に入るとやっぱり中国人の人達がやっぱり大荷物でわんさかわんさといっぺんに狭い通路に押し寄せている。通り抜けようとする荷物や人のかたまりが、タテニもヨコにも通路に対して大きすぎる。

私が船に乗り込む迄の通路と思っていたのは実は入管と税関で、人々は各々何か藁半紙の様なうすっぺらい用紙を手に持ち、それを頭上高く掲げて何か口々にけたたましく叫んでいる。多分、検閲とか手荷物料のこととかでモメてるんだろう。

そうこうしている内に私も薄暗い建物の中、人の波に押されてあっけなくそこを通過してしまった。はれ?入国審査は?出国のスタンプはもらったっけ?手荷物検査は???覚えてない。

あれよあれよという間に「中国のビザは船内で取得できます!」「ビザは二日目の晩に船内で手続きできます!」と拡声器で叫ぶような声を聞いて、私は「ビザは持ってるよな、だからいいんだよな、」こころで確認して、でもそれにしても出国手続きがあっけなさすぎて、船内で又改めて何か手続きがあるんかな?と思いつつところてん方式にタラップを登った。

しかし乗船後も別にさしたる手続きもなさそうなので私は旅券をしまってまずは自分の部屋と避難路を確かめる。

これは昔からの私の癖だった。どんな建物に入っても、まず避難路と非常口を探す。実際は方向音痴で役に立たないかもしれないが本人はやっぱり至って真剣だ。いつもいつでも「いざ」という時の逃げ道を探している。

この「いざ」という時、というのは母の口癖だった。

母は幼児の時に空襲を経験し、終戦の前日にB-29の焼夷弾に家を焼き払われ、夜中に祖母か祖父の背中に背負われて逃げまどったという人だ。そんな母の戦争と空襲警報に怯えた日々の話は本当にリアルで恐ろしい。

又、近くの川の氾濫で床上浸水も経験しているし、県内の山の噴火も経験しているし、これは従姉妹から聞いた話しだが、母の実家の前の道路が地震でバックリ地割れしたこともあったそうだ。

その為か、母は私に年中ドアの付近に荷物があると言っては「こんなんじゃ火事の時やいざ、って時逃げらんない」だの「いいかい、火事の時やいざって時は荷物なんか良い、荷物なんか一切持たなくて良いから身一つで逃げんだよ」だの「地震やいざ、って時は小学校の校庭で落ち合うんだよ」だの、

「いざ、という時の為に」かぶれと防空頭巾を用意したり、「いざ、という時の為に」毎晩洋服とランドセルを枕元に用意させたりした。

尤も私ら母子にとって私の家は殆ど毎日がその「いざ」って時で、毎日毎晩父に「出ていけ!」と怒鳴られてホントにいつ、何時どうなってしまうかいつでも分からなかった。

二人はだからいつもいつもどこへ行くにも預金通帳から印鑑は言うに及ばず自分の荷物は殆ど持って歩いていて、いつ外にほっぽり出されてもいいように常に自分の身の回りの物はコンパクトに荷造りしてあったのだ。

──余談だけどお陰で私は荷造りがとても上手い。引っ越しの時に二トン(トラック)の上に乗って紐を捌く姿は我ながら女盗賊の様だと思う。──

私等母子は一度家を出たらいつも家に入れなくなる時があるかもわからない、家に残した荷物は留守中に祖母や父に捨てられたり勝手に物色されたりする、

だから母子は何処へ行くにもそのままどうとでも出来る様な支度で外出したし寝る時はそれを枕元に置いて寝るのが当たり前の生活になっていた。

「いざ、という時の為に。」

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つづき:<197X年X月 X小(回想)>


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