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まぐまぐ・ID21973


ふぁいるでーた

すくえあ


通しNo .00042
〜なはなし
ひび・よしなし事
感想・思った事
〜のはなし
旅・せかい
喰いもの・せいかつ
せかい
東豪州
生家・故郷じぶん世界
〜のころ
すなふきん(後半)
るんぺん
とき '92 7月-'92 10月
記載しない
メルマガ配送日
 2002/04/17号


すくえあ

ワタシは今、すぐにでもやってみたい商売がある(2000年4月頃)。

それは、「何気に喫茶店」と「階段セール」である。

「何気に喫茶店」は、今住んでいるアパートをそのまま喫茶店にして、友達を迎える様にお客を迎えて、ウチのちゃぶ台でまぁTVでも視てもらいながら紅茶を飲んで頂く、というものだ。

そして「階段セール」の方は、今住んでいるアパートの階段に自分でつくった小間物や不用な物などを適当に置いて売る、というコレはそのまんま。

でも、ちょっと前に知り合った切り絵をやっているお友達の話しだと、「何気に喫茶店」の方は、かつて高円寺かどこかに実在していたそうでアル。

そこは、本当にふっつ〜のおんぼろアパートに住んでる、もうオッサンと言っても良いくらいのお兄さんが、本当にふっつ〜に暮らしていて、

でも生活感あふるるそのコタツの上には「コーラ」とか「コーヒー」とか書いたメニューが置いてあって、冷蔵庫はそうしたソフトドリンクで一杯だったと言う。

ちっ、なんだ、先駆者がいたか。

「階段セール」の方は、かつて少女漫画界をしょって立っていた?「陸奥A子」先生の、「りぼん」のふろくのミニ単行本みたいなマンガに載っていた。

でも、ワタシがこれらをやってみたいな〜と思ったのは、豪州で暮らしている時の「ガレージセール」の影響だ。

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豪州は島国で、もともと工場を建てないという国家方針がある上に、ワタシが住んでいたのは特に粗野な片田舎だったせいか、モノがあまり無くて、あっても結構粗悪品だったりした。

例えば、水道のパーツがメイドインインドネシアだったり、そうそう、中国の白いホーロー製品や食器も良く見かけたかな。(ってコレじゃあインドネシアや中国の製品が悪いって言っているみたいなんだけど、まぁ豪州では国内品に殆どお目にかかれなかったと言う事で。)

まぁ、モノが無いってだけでなく、労働賃金が低いとか、リサイクルの考えが定着しているとか色々理由はあるんだろうけれど、ワタシが住んでいた付近の人々はサンデーマーケットとかリサイクルショップとかが好きみたいで、そういうお店なんかも多かった。

マーケットは、週末ごとに郊外で行われて、土曜か日曜か忘れてしまったけれど、どちらかが(確か日曜日の方だったと思うんだけど)よりショバ代が高くて、

近隣の農家の人やプロ顔負けの手芸をするおばちゃまや、本物のケーキ職人など、いつも出店している人が多くて質も良かった(・・・というか、「本気で売る気で来ている人」の方が多かった。)

例えば、大手スーパーでアボガドを買うと当時1コ1ドル近くはしたものが、サンデーマーケットで買うと7コで1ドルだったりした。(お陰でワタシの主食は一時アボガドだった(^_^;)。)

でもその他に、本当にどーしょうもないガラクタを売る人も多くて、特にショバ代の安い方の日は、靴がかたっぽだけ、とか洗いざらしのシャツとか、そうした「こんなの買う人居るんかいな」って感じの正真正銘の「ガラクタ市」になった。

かく言うワタシもいよいよ豪州を離れる、という時には自転車から食器から家財道具一式をこのマーケットで売りさばいた・・・のに、古めかしいオルガン(丁度アコーディオンを寝かせた位の大きさの)なんか買っちゃって、余計に荷物が多くなったりした。

でも、結局このオルガンはあまりにその重力のチカラが強く、泣く泣く置いて帰った。船便で送ろうにも、どうにもこうにも質量が大きすぎた、つまりとても重かったのである。

アレを持ったら他の荷物を持つのが全てしんどくなっちゃう位に(^_^;)。(っていうか多分持って歩けないと思う。女の力じゃ)

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豪州でワタシが住んでいた所はトロピカルレインフォーレストという気候の地域で、家はその気候に合った高床式の「クイーンズランダ」と呼ばれるものだった。

日本だと近頃流行のテラスハウスなんかを想像して貰えば分かりやすいと思う。(写真はこちらに。ワタシが住んでいた家です。)

・・・家の外に階段が着いていて、入り口は当然二階、っていうか居住区は二階全体で、高床の下部分は大抵はガレージや物置みたいにして使う。(写真の物件は、その床下部分を建て増しして一階部分にも部屋を作ってあります。)

このクイーンズランダという建築がまた素晴らしくて、ワタシが借りていた家の二階部分(通常の居住部分)は居間を中心に居間を取り囲む様に部屋がいくつかあって、

L字型にまるでバレエの練習がでも出来るかの様に板の間があって、その板の間(廊下)にそって窓がびっしりとついていて、他の2方はそれぞお部屋とキッチン&玄関に面していた。

とても明るくて気持ちの良い、人が自然と居間に集まる様な設計の建物だった。

そんなクイーンズランダが立ち並ぶ近所を歩いていると、たまに「GALAGE SALE」と下手くそな字で書かれた看板が家の前に出ていて、

そのお宅に入って行くとそのクイーンズランダの高床の下のガレージ部分に、本当にこれまた「こんなもん、一体誰が買うんだ?!」って言う様なガラクタ類・・・ひん曲がったスプーンとか汚れたメモ帳とか・・・が、工夫もなく只、並べるでもなくランダムに置かれていた。

この何気なさがすごくいいなと思って、ワタシも是非やりたかったのだが、残念ながらワタシが借りていた家は先にも書いた通り床下部分を改装して居住スペースにしている家だったから、その願いは叶わなかった。

でも「GALAGE SALE」については思いをめぐらせていた。

・・・ワタシがやるとしたらどんなのがいいかな。

小間物も良いけど、喫茶店もいいな。

あんなに気持ちの良いお部屋だもの、あそこに昼間暇な人を呼んでお茶を飲みたいな。

階段のちょっと目に付くところに小さな黒板を置いて「cafe」って白墨で書こう、ドアは開けっぱなしにして。

ワタシもヒマにしていて居間でボーっとしている。で、たまたまヒマで通りがかった人がたまたまその黒板を見て、たまたま時間があったから立ち寄ってくれる・・・

立ち寄ってくれた人にはクッキーをサービスしよう。ナフキンはどんなのがいいかな?(ここには何故か生活雑貨は)可愛いのが沢山あるからなぁ・・・

インドネシアですっからかんになって、後にも先にも行けなくて、勿論日本に帰る金も無くって豪州に出稼ぎに来ている(『旅の、ことば。「伝わる」編』をご参照下さい)というのに、

ワタシはお金を稼ぐ手段として、そんなボンヤリしたことを夢想していた。

で、今住んでいるこのアパートに引っ越したばかりの時も、あまりウェッブの仕事とかが無くて、結構ヒマでお金は無くて、そんな時に

(ここで喫茶店したいな・・・ああ、「階段セール」もいいな。でも一階に住んでいるから階段はマズイか。イヤ、一階に住んでなくてもマズイよな(^_^;)。

・・・じゃあ玄関前はどうかな?外のブロック塀が途切れる所に「GALAGE SALE」って段ボールかベニアに描いて出そう・・・)

なんてまず最初に思っていたのだから、進歩が無い。

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クイーンズランダが立ち並ぶ住宅街にほど近い所に何軒かのリサイクル・ショップがあった。

コレが又、サンデーマーケットのしょぼい曜日の方か、ご近所でたま〜に見かける「GALAGE SALE」の売場を大きくしただけって感じで、

例によってボロボロの靴とかひんまがったスプーンとか、まさにガラクタがガラクタ然として置かれていた。いや「積まれて」いてガラクタ市や駐車場市より店舗規模が大きい分、そのカオスさはかなりの状態になっていた。

しつこいようだが、「ホント、誰が買うの?!」

ってモノばかり。

あ、でも「リサイクル・ショップ」の方はテントとか寝袋とか、家具とか、結構大掛かりなモノもあったかな。

とはいえワタシも新品を買う前に、まずリサイクル・ショップのハシゴをし、週末のマーケットを土日とチェックし、「売ります買います」みたいなのを調べて

いいよいよ最後の最後にサイフを取り出す・・・という感じだった。でも大抵は、木杓子から服、カバンまで・・・新品は買わずに、そうした「お古」の売場の中で用を足してしまっていた。

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そんな生活をしていて、日本に戻って来てすごく驚いたのは、日本では何でも「SQUARE」って感じがしたことだ。

コタツでもお弁当箱でも筆入れでもナフキンでもとにかくなんでもかんでも、とにかくピシっとしていて、きちんと四角で、いちいちちゃんと直角が出ているのである。

今では、そして旅立つ前は当たり前だったこのことが、帰国直後はそうしたぴしーっとしたモノに囲まれている事にすっごく違和感があって、なんでもあまりにもきちんとしていて、しばらく落ち着かなかった位だった(^_^;)。

思い出してみれば、豪州で生活していた頃は、生活の道具全てがゆがんでいた様に思う。

食器は言うに及ばず、水道のコックから、机やタンス、車でもなんでもかんでも・・・第一、最初にワタシが住んた所なんて家までゆがんでて、そのユガミが一番激しいキッチンに立つと、そーゆーのに弱いワタシは台所しながら目が回ってしまう程だったのだ。

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今はもう、だいぶ薄れて来てしまったけれど、日本に帰って来たばかりの、あの全く誤差の無い「直角」に囲まれた時の、あの、

驚きと、違和感と、感心と、敬意と、恐ろしさの、ないまぜになった、複雑なんだけれども感慨だった、あの感覚がワタシは忘れられない。

それ以来、ワタシは

「日本人」

と言うと藍色に染まった糸と、目を細めた笑みと、そしてあの「直角」の感覚を思い浮かべるのだ。

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豪州クイーンズランドの高床式家屋、クイーンズランダ
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クイーンズランダ
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