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ふぁいるでーた

女装者の悲しみ─姫(ひぃ)ちゃん─


通しNo .00081
〜なはなし
どたばた・とほほ
〜のはなし
家族・ひと
せかい
生家・故郷じぶん世界
日本の各地
場所指定無しその他
〜のころ
ナース卵
女子大生
とき 記載しない
メルマガ配送日
 2002/11/18号


女装者の悲しみ─姫(ひぃ)ちゃん─

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このお話しを姫ちゃんに、日頃の感謝の気持ちを込めて送ります。
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看護学校の授業というのはその学校によっても随分違うんだろうけれども、ワタシの通っていた学校(*1)は地元の医師会が持ってる学校だったからその医師会に入っている医者がかわりばんこでやったりしてた。

で、その日は、整形外科関係の授業で、講師には、おこりっぽくて看護婦がほげほげしていると、手術中でもメスを投げつけてしまうとゆー街の有名なゴーカイゴーケツな整形外科の医者(せんせい)がいらっしてて、凄みの利いた授業をやっていた。

で、ある薬の説明の所で、思い出した様に研修医時代にやってたバイト、夜勤の救外(救急外来)で、「(その薬使って)よく患者を殺したもんだ、三人・・・?殺したかなぁ、いや、もちろん、わざとじゃないよ」と、

実体験でもってその薬の禁忌(こういう時にこういう風にこの薬を使うと死んじゃうコトがあるから気をつけましょうね、とかそういうこと)の説明をして下さり、

それからそのセンセイの若かりし頃の色んな救外(救急外来)での裏話にどんどん飛び火して行って、あのハナシになったのだった。

ある日、いつもの様に夜勤のバイトをしていると、真夜中に救急車でオッサンが運ばれて来た。それで、

「じゃあ上脱いで下さいって言ったらよぉ・・・驚いたねぇ、女モノのスリップ着てんだよ、そのオッサン。ピぃンクの!スっケスケのヤツ!

「いやぁ・・・ありゃ・・・たまげたねぇ。

と、四角い金縁眼鏡の奥、まんまるい目をひんむき嫌々をしながら恰幅の良い身体からかすれた声を出し、「いやぁ、あれは本当にたまげた」と言うのだから、いかに柔道黒帯の猛者で文字通り無敵のかの大将(センセイ)と言えども、その時は本当にビビってしまったのだろう。

しかし、そのハナシを聞いたワタシには、そのおじ様が一体全体どうして、そんなものを着てしまったのか、暗いところで着替えて奥さんのを誤って着てしまったのか、それとも何か他の理由からなのか、

考えても考えてもどうしても腑に落ちなくて、頭ん中は「???」ばかりが羅列され白黒白黒、とてもワケノワカラン摩訶不思議なハナシ、という印象がじっとりと残った。

つまり、当時のワタシには、どーしたってそのオッサンが「手前の意思で女物の下着を着たのだ」という発想はひらめかなかったのだ。

今でこそ、ゲイの友人やら女王様の友人やら全身ピアスの友人やら・・・様々な方々と仲良く遊んでもらってて、色々なセクシュアリテのカタチや様々な人の生き方というのも知り、

世にはそういった世界があることを理解したり、共感したり、実感できないまでもナットクというか認めるというか、「そういうこともあるんだろうな」と合点の行くようになったワタシでRのだけれども、

だから、今思い返すとその時の自分の頭大混乱ぶりがなんとも可笑しい様な感じがすんだけど、ラブシーンを見て意味わかんない子どもていうかさ、井戸をのぞき込んだ時みたいな途方もない奇妙さというか、

でも当時のワタシにとっては、TV(Trans Vestite)なんて言葉はおろか、「女装」という事すら全くピンとこなかったんだよな。

そんで、タイトルの姫ちゃんなんだけど、彼女は正式には姫子といって、ワタシは「姫(ひぃ)ちゃん」って呼んでいる、女装者で、ワタシの大切な、とても大切なオトモダチ、なんでアリマス。

「女装者」、というからには、姫ちゃんは戸籍上は男性で、先の「姫子」という名前はいわば女装ネーム?で、戸籍上は男性らしいかっちょ良いお名前がちゃんとついていて、

それどころか、普段はバリッバリッの企業戦士で右でおまけに実業団でアメラグまでやっちゃってる、眼光スルドイ、ダブルのスーツの良く似合う、目元の涼しい、良いオ・ト・コなんでR。

フツウ、「女装」なんて聞くと、カワッテル、とか、ヘンタイ、とか、はたまたヘンシツ、なんて言われちゃうけれど、姫ちゃんのは、もう少し、根が深い。

でもそのヘンのこと(どーいったイキサツでいつごろからそーなったのかってとこらへん)はとりあえず置いといて、通常他人が一番に気になるのが、その人のセクシュアリテ、

つまりその人が男か女か男になりたいのか、女になりたいのか、男を愛したいのか女が好きなのか、ということだと思う(ワタシ的にはどっちだっていーんだけど、そのヘンは)。

そう言うことを一言で言ったら、姫ちゃんは「オトコを続ける為にオンナになる」んじゃないかナーとワタシは考えている。

ワタシのカンでは、姫ちゃんは、本当はオンナで、でもオトコに生まれちゃったし周囲(まわり)もオトコであることを期待するしで、普段は半ば仕方なくオトコをやってるんだけど、

でもそんな男やってる自分も結構気に入っていっててでもたまにガス抜きしないとやっていかれん、ってトコなんだろう、って勝手に解釈している。

姫ちゃんは性的にはノンケで、曰く「おっぱいはふくらましたいけれどそれでも良い、って言ってくれる女の奥さんと静かに暮らしたい」と思っているのだそうだ。

もう、それだけで、女装者の苦しみ、悲しみがわかるというものだが、女装者はこまごまとタイヘンなのだ。

女物のお洋服を買おうにも勇気が出ない、勇気が出てもサイズが無い、仕方なく上野あたりの大人のおもちゃ屋でぼったくりのドレスを買う、化粧品が欲しい、でも買えない、下着が欲しい、でも買えない(以下繰り返し・・・)エトセトラエトセトラ・・・

そんな、姫ちゃんの女装者の苦しみ、悲しみの中で、ワタシがイチバン「ありゃりゃ」と思ったエピソードは、まだ姫ちゃんが、今よりもう少し若かった頃、まだ彼女が「女装」を誰にもカミングアウト出来ずに居た頃のお話である。

姫青年はその頃、いつでも心おきなく女装をする為にわざわざアパートを借りて一人で暮らしていた。

あるお休みの日、彼(女)はいそいそとお着替えをして、ウィッグも被ってお化粧もして、バッチリである。そんな時、電話が鳴る。

「カノジョ」である。

最寄の駅から(ワタシの想像ではおそらくスーパーの白い袋をぶら下げた)カノジョさんが

「ねぇ、今から行っていぃ〜い?」

とあっま〜い声で電話をかけてきたのだ。

嗚呼、悲しいかな、姫青年はまだ、修行が足りないので

「馬鹿、なんで来るんだよッ!突然!帰れッ!」

思いっきりドスを利かして怒鳴ってしまうのだった・・・

泣いて帰ったカノジョさんの胸(なか)に一抹の不安がよぎる。

それでも彼氏(姫ちゃん)からフォローの電話が入るとなんとか気をとり直して、又次の週には彼氏の部屋へ出かけて行く。

で、さりげな〜くチェックを入れると、落ちているのだ。

茶色いカールした髪が。

そこまで来ると彼女の好奇心は、もう止まらない。引出しを開ける、バスルームを点検する・・・ルージュなんか、まだ、良い。

黒いレースのエロエロのそれを見つけてしまったら、もうアウトである。

サヨナラ、である。

そう、女装はウワキに間違われるのだ。

「どうせなら、パンツの下のカツラも見つけてくれれば良いのに・・・」

とのたまわる姫ちゃんは、今日もオネェ言葉で、悲しい事があったワタシをやさしく慰めてくれている・・・

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追記:このお話しを書いたのは多分1998年頃なんだけど、姫ちゃんはその後2002年春、「おっぱいは勘弁だけど女装はOK」という女性とめでたく結婚しました。姫ちゃん、おめでとう!末永くお幸せにね(*^o^*)

追記(その2):ちなみにこのおハナシに出てくる整形外科の先生は、ウワサでは自家用ジェットで北海道に遊びに行っちゃうってな、マジ片田舎の整形外科医にしちゃなかなかスゴイ人で、(ほんと「有閑倶楽部」かよって感じっす)、

たまたまワタシの父と同級生なんだけどまだ多分五十代前半で痛風とノウイッケツで半身麻痺になってて、「今ウチの病院でリハビリやってるよ」と同級生に聞いた後結構早くに亡くなりました。

道楽が過ぎたと誰もが思う、「太く短く」を体言した方でした。それはそれでなんだかご立派ですよね。
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(*1)ワタシの通っていた看護学校については
『てんし、たち。−χちゃんと、89人の天使たち−』をどうぞ。  (*1)にもどる


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