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ふぁいるでーた

手術前、三十分。その時一家は・・・


通しNo .00084
〜なはなし
どたばた・とほほ
思ひ出・のすたるじあ
〜のはなし
家族・ひと
せかい
生家・故郷じぶん世界
〜のころ
女子大生
とき 記載しない
メルマガ配送日
 2002/11/25号


手術前、三十分。その時一家は・・・

『地球最後の日の前日』で、顎の手術の時の事を書いたのですが。今回はその時のつづきです。

いよいよ手術の日、ワタシの当時つきあっていた彼に呼び出されましてご一家様(*1)が現れまして。

どうも病室に入る前、彼に呼び出されてコトの重大さをとうとうと説明されたというかお説教されたらしく、部屋に入った時、みんな青い顔しちょりました。

ワタシも前日の晩はかなり緊張していたのか眠剤(睡眠導入剤だけど)を与えられたにも関わらずとうとう一睡もしませんで、

消灯時間過ぎてもTV視てたりして、ドラマで生まれて初めてそのお姿を拝見したトヨエツ(*2)の奇跡の様な素敵さにこっそり感激したりしちょりました。

そんな風にまぁ前日まではなんだか落ち着かなくておたおたというかじたばたしてたんですけど、でも当日になったらなんだかカクゴが出来たというか腹が据ったというか、

洗い更した緑青色の手術着を着た自分はなんか昨日までの顔と全く違ってなんかつき物落ちたって感じ、ウソの様になかなか「良い顔」になってまして、

そしたら彼も「当日になったら腹が据わったのか良い顔になったね」と今さっき自分が思ったことと全くおんなじことを言ってました。

そんな時、ご一家様がみょーに沈痛な面もちで以てベッドの周りに勢揃い致しまして、彼にお灸を据えられたのが返って逆効果、いつものあっけらかんとした感じは全く無く、

マッタクほんとに改めてストレートな方達ばかり、これから手術を受けようって人の緊張をほぐしてやろうとか励ましてやろうとかぜんぜんで、

それぞれがさっき彼から聞いたショック(手術の内容とか危険性とか)を体現することの方が先決、いつものかしましさの微塵も無く押し黙り、ワタシがこれから受ける手術の大変さを無言でアピールしています。

・・・お通夜の方がまだいんじゃん、って位病室には多分初めて体験する様ななんとも言えない質感の空気が重く重くのしかかっておりまして、緊張をほぐしてやろうと「何か話してよー」といつもの調子でフってみても父なぞは神経質に只小刻みに二、三度かぶりをふるのみ、

それどころか術前の説明に来た医者から説明聞いたりしてどんどん顔色が悪くなって行く始末。皆さん一様に声にならない声をたて、押し黙っています。

おいおい、これから手術だっつーのにやめてくれよー、だいたいあんたらが受けるんじゃないっつーの、勘弁してくれよーという気分で「何か話してよー」ともう一度催促すると、

「では・・・」と妹が一歩前に出ます。

「私が昨日のお話しをしてあげましょう。」と妹が言うやいなや吹き出す母。ニヤニヤする父。

「ヘンなホテルでさー」

「そっさー、おかしなホテルー」

「なんか変な感じなんだよねー」

「そうそう、なーんか妙なんさー」

「で、部屋に入ったらさー、蒲団がひいてあったんだけど二っつしかなんだよー」

「ちゃあんと電話で三人って言ってあったんにさー」

「そんでもう一つ、ちいさーな蒲団が敷いてあるんさ!」

「そうそう、こーんなちっちゃな蒲団!」

「子どもと三人だって言ったからもっとちぃちゃな子だと思っちゃったんみたい」

「でさー部屋のまん中にふすまがあってさー、なんだこれ?って開っけたら!・・・お風呂っ!・・・しかも透明なお風呂なんさ!

「透明なおフロぉー?!」

「そぉっさ、透明の、全部ガラス張りのお風呂なんだよー!まる見え!

「えーそこラブホテルなんじゃないのー?」

「いや、ビジネスホテルって書いてあったよぉー」

「電話でも確認したけどちゃんとビジネスホテルって言ってたもん!」

「もぉほーんとやーんなっちゃったよ、まぁっるっ見えなんだもん」

「え?オフロも?」

「そぉっさ、壁も湯船もみーんな透明なんだよ!」

「それが部屋の真ん中に!あるん!」

「ぜーんぶ透明で、ほんと丸見えだよ、部屋ん中から!」

「どぉするーん、あンなん、落ち着かない!」

わははわははといつもの調子が出てきた所で手術室からお迎えが来ました。

ストレッチャーに乗ってキャップをかぶせられて点滴入れられます。

ガラガラと手術室に向かう途中、そうそう、もし、ってこともあるんだからさ、薄情でもぶっ飛んでても他人のコトなんかお構いなしにあっけらからんと笑ってる、いつものあんたらの顔じゃなきゃ、な、やっぱ。

それにしても・・・普段全くと言って良い程行動を共にしない(だいたいあの時は両親は離婚してたんだよな)あの三人が・・・よりによって・・・ガラス張りの風呂・・・ぷぷぷ。

奇妙にニヤニヤしながら手術室に入ったワタシでした。

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※結局、その透明風呂は使わなかったらしいです。

(*1)一家→離婚中の両親と妹。ワタシの両親は十年離婚しててその後再婚。詳しくは『トラスを渡る女達(かぜ)』に。  (*1)にもどる

(*2)トヨエツさん、退院してからそのお声を聞いてがっくり。嗚呼、天は二物を与えないって本当ね。その時見たドラマは話せない人の役だったのでワタシは彼の声を知らなかったのでした。ショック!びっく!大!(ダイ)  (*2)にもどる

※それにしても・・・なんで我が家っていつもそうなん?!見舞いに宿取ったってだけなんに・・・なんか必ずネタがあんだよな。どーしてよ?!って感じ。

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