*「風をあつめて。」は、猫ちはる。が日々書き溜めた、旅の文章やエッセイをメルマガで送りながらウェッブでも公開しているサイトです。
著作権は「猫ちはる。」にあります。全ての文章、イラスト、カット、写真などは全て無断転載禁止です。


トップページ > 文章 > いつも気をつけてないと。


メルマガ登録

下のボックスにメールアドレスを入れて登録ボタンを押して下さい。
まぐまぐ・ID21973


ふぁいるでーた

いつも気をつけてないと。


通しNo .00090
〜なはなし
ひび・よしなし事
考えた事・熱く主張
〜のはなし
喰いもの・せいかつ
家族・ひと
時事・しゃかい
せかい
生家・故郷じぶん世界
〜のころ
小学生2
とき 記載しない
メルマガ配送日
 2005/05/30号


いつも気をつけてないと。

ワタシが小学生の頃、妹がトイレを詰まらせてしまった。

母は留守で祖母がトイレの中にいる妹を責めていた。ワタシはこころの中で「妹子はなんて悪い子なんだろう」と思っていた。きっとおかーさんにしかられるぞ、とちょっぴり意地悪な気持ちになって祖母の陰から妹を見ていた。

母が帰宅して、ワタシはてっきり母がかんかんになって怒ると思ってた。

いや、母はかんかんになって怒っていたのだが、それは妹に対してではなかった。妹がそんな状況になっているのに誰も助けてやらなかったこと(特に祖母)に対して憤っていたのだ。

見ると、未だトイレの中で全身ずぶぬれになって詰まった便器をなんとかしようと必死になっている幼児がそこにいた。

その時、始めて胸が痛くなった。

そして不思議だった。

母が気づかせてくれるまで、ワタシの目には「まだ小さな妹」が写ってなかったのだ。

同じ妹の姿が見えていたはずなのに、急に背が縮むはずもないのに、急に手が小さくなるはずもないのに、さっきもこうして、びしょびしょになりながらその小さな身体でなんとかしようと必死だったのに、母が帰って来る前と後とでは、見えている妹の像(すがた)は全く違って見えていたし、そうやって彼女が詰まりを直すことは当然のことと思っていたのだ。

ワタシは人間の価値判断が他人の言うことや自分の思い込みで簡単に左右されてしまって、そしてそれは自分の五感すら危うくしてしまうのだ、ということをその時学んだ。

母は、戦争の、しかも空襲の体験者だから、いつも人々が戦争を良いことだと思い込んでしまっていた頃の日本人の話をしてくれた。だからワタシの身体の中では、そのことと、戦争のこととが幼心にも容易に結びついた。

ひとって動物と違ってよっぽど気をつけてないと、何が大事かとか何がだめだとかがすぐあやふやになってしまう。

これが正義なんだと毎日言われ続けたら、それがどんなに苦痛でも世の中と隔たっててもその中での「正義」を守ろうとしてしまい、そして自分自身も他人にその「正義」を押しつけるようになって行く。

いつも気をつけてないと。

-------
ちなみに妹はそれからトイレに行く際、割り箸を持参する様になった。でっかいうんちくんが出た時にそれでちぎる為だ。

ってか祖母が「ケイザイ、ケイザイ」とか言ってトイレのタンクに何本もビール瓶を沈めてたから、それで流れるお水の量が少なくて詰まったんだと思うんだけど。

以来、実家のトイレには割り箸が備え付けられている。

・・・ってなことを、以前妹の彼氏に話したら、妹が真っ赤になって怒っていた。すまん、妹よ、今度は世界に向けて発信だ。


このお話しをおススメしてね!→




 おススメ!へ  一覧へもどる


*バックナンバーについてはデータがたまる迄は旧旧サイト旧旧サイトのミラーをご活用下さい。


このページ内の全ての画像、文章、コンテンツなどは無断使用しないで下さい。
使用する場合は、管理者に必ず事前にメールで是非を聞いて下さい。