* 般若犬〜北極圏犬ゾリツアー〜 その2 *
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*これは続き物です。その1はこちらです。


すったもんだしながらも、無事『フィンランドサファリ・北極圏ラップランドの旅』というTV番組の企画旅行に旅立ったワタシとその友人。

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ナリタから飛行機に乗って、いよいよ翼の下には、初めて見る、北欧の世界が・・・

森も、人も、赤いお屋根のお家も、みんなみんなクッキーや砂糖菓子で出来た様に愛らしい。粉雪が、ケーキの最後の仕上げをするパウダーシューガーの様にふりかかっている。

思わず「ぢゅる・・・っ」

ってウソです(^_^;)。(「ぢゅる・・・っ」については『よだれの出る瞬間』をご参照下さい。)

空港に着陸すると、又飛行機を乗り継いで更に北のロバニエミという所まで行くとのこと。

フィンランドのドメスティック空港は、何処もほんとに小さくて可愛らしくて、中にはドアを空けて空港内に入ってそのまま又目の前のドアを空けて乗り場に歩く・・・なんて言う、バスターミナルみたいな所も少なくなかったです。

さて、ヘルシンキの空港に降りて撮影隊の人が荷物を受け取ってびっくり!

撮影機材の多いこと!

こんな沢山の機材、どうやったら盗まれたりするのか疑問だけれども、スタッフはみんなは疲れと初めて訪れる外国の空港でピリピリ。

乗り継ぎの手続きに皆がカウンターへ行こうとするとスタッフの誰かが「機材が盗まれる!」と怒ります。

ワタシも、すぐ目の前においしそ〜なお菓子のショウケースが目に入ったので、思わずそっちの方へ向かって走って行くと、

「何処行くの!!勝手に動いちゃダメ!!」

と監督さんに大目玉。

TVのお仕事って、ほんっと〜〜〜〜〜に窮屈。

ほんの、50Mを動くのだって監督さんは怒るんですヨ。もぉ、びっくり。

(こんながんじがらめじゃやんなっちゃう・・・)

現地ガイド兼、通訳の日本人のオジサマと合流し、飛行機を乗り継ぎます。

搭乗の際、荷物(機材)が重量オーバーとかですったもんだありましたが、フィンランド空港とのタイアップの番組だったみたいでなんとかなりまして、ロバニエミへ。

で、この日は「HOTEL POHJANHOVI」(ポホセンビ)に泊まり、翌朝は早くから集まりました。

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早朝・・・と言っても今は丁度白夜の反対の状態で、太陽はなかなか昇りません。撮影の間中、太陽は午後2時頃になるとやっとこさっとこと言った感じでよわよわしく昇り、そして4時にはもう真っ暗になってしまう、という様な状態でした。

そんな状態ですから年中夜みたいなもので、早朝なんだか昼何だか夜なんだか・・・と言った感じです。

又、気温が低い為、朝顔を洗うことを禁じられていました。

もし、朝顔を洗うと顔の毛穴に残っている水分が凍って凍傷を起こしてしまう、というのです。

げげ。

そしてなんだか宇宙服みたいな専用の防寒着を来ていざ、ラップランドの伝統的な村である「トナカイ村」へ。

その日は「スノーモービル」という乗り物を各自が運転して移動しました。

ワタシは乗り物大好きなので大はしゃぎしてまた監督さんに怒られて、「絶対スピードは出さない事、この撮影で事故があったら番組に穴が空いてしまうんだから!!」

と釘をさされました。

で、安全運転で出発。

川べりをスノーモービルで(スピードはゆっくりですが)びゅんびゅん進むと、本当に顔が切れてしまう様に風が冷たくて、でも結構な距離を乗って行きました。

トナカイ村が近づいて道が険しくなってくると、友達が道(もちろん舗装なんかされていません。)から脱線してスノーモービルを草地(って言っても草なんか殆ど生えてない枯れ枝ばかりの所だけど)の中に乗り上げてしまいました。

聞いたら彼女、車の免許も無くって自転車すら乗れないのだとか。

トロくて背も低くて全然乗り物なんか乗れなそうなワタシが実は普通、自動二輪の免許持ちで乗り物大好きで、しっかり者の彼女の方は自転車すら乗れないなんて・・・でもそんな状態でここまでスノーモービルを運転していたんだから大したものです。

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トナカイ村につくと、さっそくと言った感じで柵にトナカイさんが一頭繋がれていました。

トナカイを生まれて初めて見るワタシは大コーフン!

またまたトナカイに走り寄ると、またまた背後から監督さんの怒る声が・・・

でもだって、かわいいんだもん。仕方ないじゃん。それにここまで来てトナカイに触れないなんて、そんなのあんまりでしょ?

トナカイさんをわしゃわしゃして、次はいよいよラップランドの人の『歓迎の儀式』というのをやって頂くことに。

その儀式は非常に伝統的かつ、厳格な儀式だそうで、屋外の雪景色の中、小さなたき火の前で行われました。

カラフルなラップランドの衣装を付けた大きな体の村長さんが(というかフィンランドの男の人はみんな大抵がっちり型でカッコ良いんです。)自ら儀式を執り行って下さるという事で、儀式の説明をしてくれました・・・が、その説明を聞いてびっくり!

手に持っているいかついナイフでクビを切って、悪い血を出してその代わりに良い血を入れる、と言うのです。

(クビ・・・って頸動脈じゃん!!)

恐怖におののきながら、二人半ベソで頭(こうべ)をたれます(というかクビを抑えられて、ワタシは正座していたので、前にこごむカタチになりました。)

「ぎやぁ〜!!」と雄叫びを上げると、村長さんが

「あ゛〜っ!!」

と唸ってワタシのクビにナイフを振り下ろしました。

「ぎやぁ〜!!」とワタシは大パニックでしたが、痛くはありませんでした。

後でTVを視て解ったのですが、ナイフはいわゆる『峰打ち』で、ナイフがクビに当たる瞬間に隠し持っていた雪を襟の中に放り込んでいたのでした。

でもまだワタシはコーフン状態で、半ベソをかいていました、が、今度はすかさず木製のコップを渡されてコレを飲め、と言います。

今度は一体、何を飲まされるのかすごくドキドキでしたが『厳格な儀式』という事が頭の中にあったので、ムリに飲み干しました。

(げげ〜なんだコレ〜ッ!!)

多分、それはたき火にくべられていたトナカイのミルクに、何かお酒を混ぜたモノだったようです。

ワタシはお酒に大変弱く、1滴も飲めない下戸なので、すっごくみょ〜な味に感じたのかもしれません。

その後、村長さんはたき火にくべられた木からすすをとって、指でワタシ達の眉間にハの字がひっくり返った様なカタチのマークと、鼻筋にも縦にすーっと線を書きました。

コレは、死んだ後、トナカイの角が生えない様に封印する為のものだそうです。

そして、この儀式を受けたモノは、死んだ後、例え何処で死んでも魂だけはラップランドに帰って来るのだそうです。

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ところで、アフリカには

『アフリカの水を飲んだ者はアフリカで死ぬ』

という言い伝えがあるそうで、そうするとケニアで生水を飲んでいたワタシは、死ぬときはアフリカで死ぬ事になるワケです。

そして死んだ後のタマシイの方はというと、アフリカ大陸を縦断し、地中海、アドリア海、バルト海を超え北極圏に突入して地球のてっぺん近くのラップランドまで行かねばならない事になります。

となると、ワタシの死に際、そして死んだ後は結構忙しい事になりそうです(^_^;)。


(その3につづく)